We-Being とは
幸せは、自分の内だけでなく、 人・場・社会とのあいだにも宿る。
We-Being は、コクヨが京都大学の内田由紀子教授とともに深めてきた、ウェルビーイングの考え方の1つです。Well-being の「Well」を「We」に置き換え、「『あいだ』に宿るウェルビーイング」という意味を込めました。幸せのありかを、個人の内面だけでなく、人と人、人と場との関係のなか、すなわち「あいだ」に見出していく考え方です。
わたしたちは We-Being を、「人や場への好奇心を通して調和し、その協調関係を支えに自律的に行動できる状態」と定義しています。個を抑えて集団に合わせよう、という話ではありません。たしかな協調関係があるからこそ、一人ひとりが自分の意思で動ける。協調が自律を支える、という順番を大切にしています。
We-Being を構成するのは、好奇心の向かう先が異なる3つの幸せです。
分かち合う幸せ
自分の成果だけでなく、仲間の成長や達成をわがごとのように感じられる幸せ。
身近な仲間への好奇心から生まれ、互いによい影響を与え合えている実感に支えられています。
なじむ幸せ
自然と支え合う仲間や場が存在し、ここに自分の居場所があると思える幸せ。
チームや会議、オフィスといった場への好奇心から生まれ、無理なくその場に溶け込んでいる感覚です。
ひとなみの幸せ
社会の中で「私もやれてる」という安心感から、今の自分をやさしく肯定できる幸せ。
世間への好奇心から生まれ、世の中の実像に関心を向けるからこそ、世間の水準を等身大に捉えられます。
3つの幸せは、目の前の相手、日々を過ごす組織や環境、顔の見えない世間と、対応する関係の幅がそれぞれ違います。
どれかひとつが突出していればよいわけではなく、分けて捉えられることは、自分のいる場の課題を見立てるうえでも役に立つはずです。そして、協調が同調に変わってしまわないための手がかりが、人・場・社会への「好奇心」だと考えています。
なぜ今、 新たなものさしが 必要なのか
「わたし」の幸せから、 「わたしたち」の幸せへ。
これまでのウェルビーイング指標の多くは、個人を単位とする欧米の価値観をもとにつくられてきました。そうした尺度のもとで大切にされてきたのが、自己成長や自己実現です。それは間違いなく、個人の人生を豊かにしてきました。一方で、自分の幸せを追求するだけでは、どこか生きづらさを感じる場面も増えています。
実際、日本の職場に目を向けると、孤独や孤立が広がっています。コクヨと京都大学の9か国調査では、気軽に相談できる同僚の数は日本が平均2.0人と最少。1人もいない、という人も約20%にのぼりました。協調性の高い文化といわれながら、いずれも9か国で最下位です。
いま目を向けるべきなのは、個人の幸せだけでなく、人や場や社会の「あいだ」に宿る幸せ。「わたし(I)」だけでなく、「わたしたち(We)」目線で幸せを捉え直してみることではないか。そこに、職場の孤独・孤立といった、これまでの価値観では解けなかった課題を解くヒントがあると考えています。
これらを個人の心がけの問題にせず、関係や場の課題として捉え、向き合っていく。そのために、 We-Being という新しいものさしを社会に届けたいと考えています。
なぜコクヨが、 We-Being を 考えるのか
働く場所を、 つながりを取り戻す場所へ。
コクヨは、めざす未来の社会像として「自律協働社会」を掲げています。一人ひとりが自分の意思で働き方や生き方を選びながら、他者とゆるやかに協力し合い、ともに価値を生み出していく社会です。
ところが4地域比較調査では、日本だけ、自律と協調が相反するという結果が出ました。日本はもともと、協調的な関係を土台に個人の自律が育ちやすい文化圏。だとすれば、まず育てるべきは、安心して意見を出せる協調的な職場なのかもしれません。We-Being は、この「協調起点の自律」への道筋を測り、実践していくための考え方であり、コクヨが社会との約束として掲げる「好奇心を人生に」というメッセージともつながっています。
コクヨはこの考え方を、空間や環境のデザインへ翻訳しようとしています。鍵になるのは、「あいだ」のデザイン。関係や好奇心が動き出すのは、会議室そのものより、会議のあとの通路での立ち話のような、機能と機能のすきまであることが多いものです。場の機能を決めきらず、関係が生まれる余白を残しておく。効率の目には無駄に見える部分にこそ、We-Being の目には意味が宿ります。用がなくてもいられる。手を加えてよい。途中のものを見せてよい。そんな小さな「よい」の積み重ねが、好奇心を差し出しやすい場を育てていきます。
働く場所を、仕事を処理する場所から、人とのつながりを取り戻していく場所へ。わたしたちは、そんな場のあり方を思い描いています。
私たちが目指す姿
頼れる拠り所と、 離れられる逃げ場を、 社会のあちこちに。
このプロジェクトは、コクヨが答えを配る場ではなく、みんなでひらいていく探求の場でありたいと考えています。
We-Being を生産性の道具にせず、囲い込まず、共感してくださる企業や研究者、実践者のみなさんとともに育てていく。実装の場も職場に限らず、学び舎や公共空間へ。日本にとどまらず、アジアのウェルビーイングもひもときながら、行き過ぎた個人主義に悩む社会へ、もうひとつの選択肢を届けていく。
めざすのは、頼れる誰かがいる拠り所と、騒がしさから距離を置きたいときに退避できる逃げ場が、社会のあちこちにある風景です。この探求に、ぜひご一緒ください。
解説記事




